新幹線でひとり東京へ帰る夜、ぬるま湯のような湯加減で好きと嫌いを漂いながら、ああ、わたしはこのまま謎の液体の中で人知れず溶けてしまうのかもしれないのだなあ、としばし目を半開きにしていると、「次は東京です」というアナウンスが流れ、1ミリも溶けなかった脳と体は、はっきりした形のままに無言で雑踏に消えていくのであった。世知辛い。