帰り道。人はおらず、駅の長い長いエスカレーターに揺られていた。たまにこういう日があって激しく嬉しい。
ふと前を見ると20代前半くらいな若々しいカップルがいた。2人はそっと抱きついたり離れたり、急に走り出したり戻ってきたり、満面の笑みで見つめあったかと思えば2つ並んだ同方向のエスカレーターを別々に乗って、真ん中で手を繋いだり離したりしていた。
ああこれ、知ってる。少女漫画かなにかの実写だな。ってわたしはもうエスカレーターの手すりに頬杖ついてじっと見ちゃったよね。
そのときわたしのイヤホンから流れてきたのは「ラチエン通りのシスター」であった。聴いて。すげい良いから。
この世界には、恋する2人と不審なわたしがいて、たったそれだけが映画になるような気がした。不審なわたしが余計だわ。