その昔、家を建て替える匠のなんとか、みたいなテレビ番組を見ていた。
あるところに、おばあちゃんの家とその息子家族の家が隣接して建っていた。おばあちゃんちは古くお風呂がない。毎晩寒い思いをしながら、吹きさらしの渡り廊下みたいなところを通って、息子の家にあるお風呂に入りに来ていた。番組はおばあちゃんの不便をなくすため、おばあちゃんちをリフォームしてすばらしいお風呂を作った。おばあちゃんはもう寒い思いをすることなく自分の家でお風呂に入れる、めでたしめでたし、という回であった。
相方ちんはそれを見て「(おばあちゃんは)毎晩お風呂に入りにくることで、息子家族と顔を合わせていたのにね」と言った。
わたしは箸を落とした。
それが真実なら、まもなくそれは当人たちも気づくであろう。
しかし怖いのはここからだ。わたしにおいては、便利の裏側で失ってしまった何かを、思い出すことすらできないまま今に至るのではないか、と。
まあ、それに気がついたところで、何も変わらないのであるが。
あははは、うけるよね。