1年前の記憶のはなし

on Mar 10, 2012 / in 思考

LOMO LC-A+ / Lomography X Tungsten 64 35mm

昨日と同じ。いつも通り穏やかに過ぎていくはずの金曜日。
2011年3月11日が揺れた。

(以下、これは振り返りの記事。ただの記憶のはなしです。)

東京都港区にある割と古めなビルにある会議室で打ち合わせ中だった。入り口付近にあるショーケースがガシャガシャ言い出したので、これはただことじゃないと感じた。

そういうとき、意外と人は冷静だ。このビルは耐震設計されてるのかな、外に逃げた方が良いだろうか、とりあえずコートと財布が必要だ、など。部屋から外に出て非常階段のドアを開けると、さらに大きい揺れがきた。
遠くから黄色い悲鳴が聞こえた。

はじめて直面する、ビルが崩れるかもしれない恐怖。とはいえ、まさか崩れるなんて誰ひとり思っていない。それは恐怖に直面しないようにする、脳の防衛反応かもしれない。あたしがたまたま居合わせたこのビルは、たまたま崩れなかった。たったそれだけのことだ。

耳をすますと、どこからか緊急時らしいアナウンスが聞こえる。でも、何を言っているのかまるで分からない。

会社のパソコンで、Yahooの地震速報を見た。宮城県沖で震度7と知って戦慄した。東京は震度5弱であった。iPhoneから流れるラジオはよく聞き取れなかった。すごい勢いでtwitterが更新されていた。UstreamでNHKが見れた。千葉のコンビナートが火の海になっていて、その映像はまるで外国だった。ケータイはつながらず、会社の固定電話から実家に電話した。「もーびっくりだよねー」という母の声に、あたしは笑った。

18時頃まで会社にいたけど、電車は全然復旧しない。街はたくさんの人で溢れていた。歩いて帰る道すがら、喫茶店もコンビニも、カプセルホテルやビジネルホテルらしき入り口でも、人が列をなしていた。ガラスが割れて崩れそうな古いビルのまわりには、黄色いテープが貼られ警察官が立っていた。

ここにいる全員が同じ場所に向かっているような錯覚にとらわれる。まるで行進しているような。ヒールを脱いでスリッパで歩く人や、ヘルメットをかぶっている人もいた。

あたしは幸い、1.5時間程度の家路なのだが、長く長く歩かなければならなかった人たちは、後に「○時間も歩いたよ」と武勇伝のように話すことになる。

家に到着すると、マンガの山は崩れ小さなテレビはゴロンと転がり洗面台やバスルームは散らかっていたけど、どーってことはない。本当に全く何にも問題ない。だって、ここは東京だもの。

相方ちんと二人でテレビを見ていた。どのチャンネルのキャスターも同じに見えた。ヘルメットをかぶって地震の話を繰り返していた。ずっとずっと繰り返し繰り返し繰り返し。あたしはいつの間にか眠った。

翌日は土曜日で、静かな朝。それから静かな昼と静かな夜。コンビニは薄暗く食料が並んでいない。次の日は日曜日。そして次の日は月曜日。時間軸はまったく狂わない。

テレビとインターネットにまみれる。ニュースに戸惑い、情報は錯綜し、原発問題も発生し、たまに余震が来る。ぽぽぽぽーんが流れてる。iPhoneごしに毎日毎日、地震や津波のおそろしい映像を見て、目から水を流しながら眠った。

どんなに願っても泣いても叫んでも届かない、それが普通に生活しているたくさんの人たちに訪れた。自分だけはそんな災害には巻き込まれないと、誰もが思っていたはずだ。今のあたしと同じように。死んでいたのはあたしだったかもしれない。生きているのが申し訳ない。何も出来なくて申し訳ない。そう思わずにはいられない。微塵も被災していないこのあたしですら、そんな思考に陥るのだから。

その頃を境に、会社に行く前につける朝のテレビ番組は”朝ズバ”になった。若くて明るいアナウンサーを見る気になれないし。みのさんはおじさんだから安心だ。

何の教訓を得たのか、悲哀の気持ちはただの偽善か、興奮状態が続いているのか、何を願うのか。
どこへも進まずに1年がたった。ベクトルは違えど、どこかに踏み出してはいるはずなのに、それがどこか分からない。小さな部屋の中で、ぐるぐるぐるぐると同じ場所を繰り返し回っていただけかもしれない。

部屋の隅には、今見るとまったく使い物にならないんじゃないかと思うような適当な物を詰めこんだリュックが置いてある。

今日もあたしは、近くの喫茶店でAirに向かってブログを書いている。

たったそれだけのことなのだ。

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